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【つれづれ日記】誰もが安心しその人らしく前向きに人生を楽しめる地域を創る

2025年11月05日ブログ

誰もが安心しその人らしく前向きに人生を楽しめる地域を創る

 

●千葉県柏市 社会福祉法人 福祉共生会

あすか北柏 川田可奈

 

あすか北柏には知的、身体、精神のお客様の中に重複して医療的なケアを必要とされる方がご入居されています。

18名の入居者の中、日常の動作に医療的サポートが必要な方が14名。16名が車いすを使用されています。見学にいらした方に病院のようですね、と言われてしまうほど医療機器が置いてあります。病院のよう。私はそう思われてしまうことが悲しく、そこが1番嫌なところです。

生活の場として感じてもらうにはどうしたらいいのか。毎日、理想の環境にたどりつかない日々。その嫌なところの改善には至らないままグループホームに移動になり、あっという間に1年半が過ぎた頃、徳島の全国大会に参加する機会が訪れました。

 

とても楽しそうに自身のことを分析しながら話される姿。私たちのことは私たち抜きで決めないで、という想いや支援者に感謝しながら自分の理想の生活を手に入れたことを話され、途中感極まって言葉を詰まらせる姿。非常に感動しました。それと同時に、課題と問題点が見え、私はいったい1年半も何をしてきたのだろう。トイレも忘れるほど引き込まれていく内容に1人悶々としていました。

入居者の気持ちを汲み取って環境を整えてあげていたのだろうか。汲み取っていたはずのことは私達の自己満足なのではないのか?病院や施設のようだと言われて、それがとても嫌で変えたかったはずなのに、勝手に決めつけて制限を作っていないだろうか。私達の運営は正しいのだろうか。そんな気持ちでその日は全く眠れませんでした。いまだに私はこの大会で受けた衝撃を引きずって生活をしています(笑)。徳島大会の方々にはとても良い刺激をいただき、課題や現在の支援を見直すきっかけを作っていただき、忘れられない時間となりました。

 

私の法人の法人理念は「誰もが安心しその人らしく前向きに人生を楽しめる地域を創る」です。

医療的ケアと言われるものの中に支援者が正しい知識と資格を持つことで、育った地域、慣れ親しんだ場所に住むことができる方がたくさんいらっしゃるのではないかと思うことがあります。

特に胃ろうの相談は非常に多くいただく相談内容の一つです。口から食べられなくなって胃ろうになってしまったので、退院後うちのグループホームでは受け入れできない。グループホームからのそんな依頼も多々あります。胃ろうは増設すると、ときに吸引が必要になることも多く、1日中ベッド上で過ごされる方もいらっしゃるので、少し医療依存度は上がってしまいます。精神的な理由から食べることをやめてしまった方などの相談が多く、そのほとんどの方がまだお話や意思表示もしっかりできるため、私は少し虚しい気持ちになることが多くなってきました。

 

医療的ケアは、職員の意識やほんの少しの事業所側の勇気で介護職でも可能なケアとなります。

住み慣れた場所、その場所にできるだけ長くいてほしい。居させてあげたい。そう思っている方も多いと思います。あすか北柏のように、看護師を24時間配置したグループホームはあまりありません。慣れた通所も遠方入居を希望される方には結局諦めてもらうしか方法もなく、環境を変える苦しい選択を強いられます。慣れた場所、慣れた人、慣れた日課。全て諦める生活を強いることが果たして仕方ないで済まされていいのか…。

 

一昨年、胃ろうになったためうちには居られないので受け入れてくれるところを探していますと相談をいただき入所された方が、先日以前通われていた生活介護のイベントに招待いただきご案内したところ、グループホームでは見たことのない姿を見せてくれました。何十年も会っていない先生の名前を呼んだり、犬猿の中だった友人に会って抱き合ったり。ダンス部に所属されていたので飛び入りで発表に加わって大勢の前でダンスを披露されたり、普段あまり発語なく、うなずかれたり首を振ったり身ぶり手ぶりで意思表示されていましたが、その日1日で1年分お話ししたのではないかと思うほど自発的によく声を出され、衝撃と驚きを隠せない出来事を目の当たりにしました。できるだけ長く、環境を変えずに生活できる人生を送ってほしい。それが本当に幸せなことなのだと気付かされた瞬間でもありました。人前であんなに楽しそうに踊っている。その姿を観て思わず涙が。とても悔しい思いをしました。

 

環境の変化に敏感な方が住み慣れたところから離れることが有効であるのか。選択肢は多いに越したことはありません。

医療的ケアは今後ももっと増えると思います。確かに危険なことも多いと感じることもありますが、その多くはご家族ができるケアです。そのケアを特定認定行為として正しく認識し、資格を取得すれば看護師さんがいなくても支援者でできることもあるのです。

私は自分自身の知識や経験のなさでその方の幸せの選択肢を減らすことがないように常に情報を模索しています。

多くのグループホームの中で1人でも胃ろうになってしまった方をそのまま同じ場所で受け入れてくださったら、ここしか受け入れてもらえないはなくなると思います。

そして「誰もが安心しその人らしく前向きに人生を楽しめる地域を創る」。そんな地域が全国にもっと広がることを願っています。病院でもなく施設でもなく、グループホームの魅力。そこが苦渋の決断で住む場所になってほしくない。徳島大会に参加されていた方々のように生き生きと暮らせる場所であってほしい。自立とは何か、何が最善であるのか。私はこれからも前向きに考え入居されている方の伴走を一生懸命していけたらと思っています。